有機農業について語ってみた25年11月13日収録PODCAST要約記事(後編)有機農業

2026.01.05

有機農業とは「安全」ではなく「持続可能」──農家と消費者をつなぐ本当の意味

「有機=安全」「オーガニック=体にいい」。
そんなイメージを、私たちはどこまで正しく理解しているのだろうか。

群馬県の端っこで新規就農した農家・大野さんと、メディアトーキング代表・山元将永による対談後編では、
有機農業・有機認証をめぐる“誤解”と“本質”が、現場のリアルな言葉で語られた。


農薬は「なくす」ではなく「変わってきている」

対談の序盤では、農薬の話題から始まった。

かつて主流だった「これを使えば大体の虫を殺せる」という強力な農薬は、
現在では使用禁止や制限が進んでいる。
有機リン系など、人や環境への影響が強いものは、年々使えなくなってきた。

一方で、現在の農薬は「分解が早い」「作用の仕方が違う」など、
人への影響を抑える方向へ進化している。

「農薬も進歩していて、基本的にはすごく早く分解しちゃう方向に進んでます」


有機でも使える「農薬」は存在する

有機農業では「科学的に作られた農薬」は原則使えない。
しかしそれは「農薬を一切使わない」という意味ではない。

たとえば、生物農薬。
害虫を食べるダニや、てんとう虫など、
自然界の仕組みを利用した防除方法は、有機農業でも認められている。

どの資材が使えるかは、農林水産省のリストで明確に定められており、
決して“自己判断”で行われているわけではない。

「このリストの中のものだったら、有機で使って大丈夫ですよ、って決まってます」


「有機=安全」ではないという誤解

対談の中で、繰り返し強調されたのがこの点だ。

有機農業とは、
・化学合成農薬・化学肥料を使わない
・遺伝子組み換え技術を使わない
・環境負荷を下げ、持続可能なやり方をする

という「方法の定義」であり、
「安全」「健康」を保証する言葉ではない。

「有機は“安全”とは言ってないんです。持続できるやり方をしている、っていうのが正確ですね」

それでも長年の流れの中で、
「有機=安全で体にいい」というイメージが、
ビジネス的に成功して広がってきた背景がある。


有機農業は“技術がいる農業”

有機農業は「自然に任せている」「楽そう」というイメージとは真逆だ。

使える農薬は効果が弱いため、
虫が大量発生してしまえば、手の打ちようがなくなることもある。

そのため、有機農家は薬に頼らず、
・防虫ネットを張る
・風通しを良くする
・株間を広く取る
・土作りを徹底する
・草を小さいうちに管理する

といった、物理的・管理的な手法を積み重ねていく。

「効き目は、おまじないレベルに近い。だから科学じゃないやり方で対処するんです」


「量」と「美味しさ」は対立しない

かつての日本農業は、食糧不足の時代を背景に「増産」が最優先だった。
しかし食が満たされるにつれ、「美味しさ」が求められるようになった。

一見すると、量を取る農業と、美味しさを追求する農業は相反するように見える。
だが大野さんは、こう語る。

「突き詰めていくと、たくさん作るのと美味しく作るのは、同じ方向なんです」

健全で均一な作物を作らなければ、結果的に収量も安定しない。
美味しさと量は、どちらも“健全な管理”の先にある。


有機の味は「体にすっと入る」

有機の野菜や米について、
「甘い」「コクがある」といった表現がされることが多い。

しかし大野さんは、少し違う言葉を使う。

「美味しいというより、体に合う。体にすっと入ってくる感じです」

えぐみが少なく、食べた後に違和感が残らない。
それは、無理な防除や直前の強い農薬使用を避けているからこそ生まれる味だという。


消費者にとっての最大のメリットは「保険」

近年、肥料や農薬の価格高騰が続いている。
輸入資材に依存する農業ほど、その影響は大きい。

一方、有機農業は、資材の多くを国内・地域でまかなっているため、
原価変動の影響を受けにくい。

「有機は、価格や供給の“保険”みたいなものだと思ってます」

結果として、有機農産物の価格が、
慣行栽培と変わらない、あるいは安くなる逆転現象も起きている。


消費者ができることは「旬を楽しむ」

対談の終盤で行き着いた答えは、意外なほどシンプルだった。

「消費者ができる一番のことは、旬を楽しむことですね」

通年で同じ野菜が並ぶ社会は、
大量のエネルギーと無理な栽培によって成り立っている。

旬のものを、旬の時期に食べる。
それだけで、農業は持続可能に近づき、
味も価格も安定していく。


有機認証は「人と人をつなぐ入口」

有機認証は、完璧な制度ではない。
課題も多く、取得のハードルも高い。

それでも、有機認証には大きな役割がある。

「誰が作っているのかを知る、きっかけになる。それが一番大きいと思います」

ラベルをきっかけに、生産者を調べ、
顔や考え方を知り、つながっていく。

それは、農家と消費者の距離を縮める、
ひとつの“入口”なのかもしれない。


まとめ

有機農業とは、理想論でも、単なる健康志向でもない。

環境に負荷をかけすぎず、
美味しさを追求し、
長く続けていくための「考え方」であり「姿勢」だ。

有機という言葉に出会ったとき、
ぜひ一度、足を止めて考えてみてほしい。

「これは、どんな人が、どんな思いで作っているのか」
そこから始まる関係こそが、これからの農業を支えていく。

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