自然の中で育てる学童保育「スワンズキッズ」(前回の続き)
ぱくぱく農園では今回、館林市成島町にある「しぜん教育研究学園」を訪ね、代表の高橋弘明さんに、学童保育「スワンズキッズ」を始めたきっかけや、これまで大切にしてきた教育への考えについて話を伺いました。
高橋さんはもともと高校の理科教員。専門は物理でした。
ところが、教壇に立ってみると、黒板に書いて教科書通りに授業を進めるだけでは、なかなか興味を示してくれない生徒たちがいたといいます。
そこで高橋さんが始めたのが、生徒たちが「面白い!」と思える授業でした。
爆発実験など、生徒たちがワクワクするような実験を授業に取り入れていくと、不登校だった生徒が、その授業にだけは来るようになったこともあったそうです。
「それなら、自分で学校をつくればいい」
一方で、高橋さんの自由な授業は、学校という組織の考え方とは必ずしも一致しませんでした。
教科書や学習指導要領に沿わない指導方法をめぐって学校側と衝突。
管理職から言われた、
「好き勝手やるなら自分で学校作れば」
という言葉が、その後の人生を大きく変えるきっかけになりました。
高校を退職した高橋さんは、その後イギリスの日本人学校へ。
そこでの教育経験などを経て日本へ帰国し、高校や中学校よりもさらに前の段階、小学生や幼児期の教育へと関心を深めていきます。
そして29~30歳の頃、当時はまだ法制化されていなかった「学童保育」の世界へ。
以来、約20年にわたって学童保育を続けてきました。
子どもが思い切り遊べる場所をつくりたい
学童を始めるにあたり、高橋さんがこだわったのが「場所」でした。
子どもたちが大きな声を出しても、思い切り遊んでも、近隣への騒音を気にしなくていい環境をつくりたい。
そのため、あえて学校から離れた広い土地を選択しました。
購入した土地は農地を含めて約8反。
学校から離れているため送迎が必要になりますが、それでも子どもたちが自由に活動できる環境を優先したのです。
現在は館林市内の三小、八小、十小の児童を対象に、学校への迎えから各家庭への送りまで行っています。
学校によって下校時間が違い、その日の利用状況によって送迎ルートも変わります。3校への送迎と施設に残るスタッフを合わせると、最低でも4人が必要になるなど、日々の運営は決して簡単ではありません。
子どもは「3泊以上」すると変わる
高橋さんが長年大切にしてきたのが、自然の中での体験です。
かつて「自然教育研究学園」では、「青空教室」としてカヌーや山登り、動物との触れ合いなど、さまざまな野外活動を行っていました。
高橋さんによれば、
「子どもは3泊以上するとたくましくなる」
のだそうです。
1週間ほどのキャンプでは、最初は「帰りたい」と泣いていた子どもも、日が経つにつれて泣かなくなり、自分から活動に関わるようになっていく。
大人が教え込むのではなく、親元を離れ、自然の中で生活すること自体が子どもを変えていくのでしょう。
2002年には、30人の子どもたちを連れて10日間の「北海道放浪の旅」も実施。
さらに、利根川沿いを自転車で120~130km走る3日間の旅など、今ではなかなか実施するのが難しいような活動にも挑戦していました。
こうした大規模な野外活動はスタッフ不足などから終了しましたが、その考え方は現在の学童保育にも受け継がれています。
高橋さんが見たいのは「つくられた笑顔」ではない
話を聞いていて、特に印象に残った言葉がありました。
高橋さんが学童を続けていて一番嬉しいのは、子どもを意図的に笑わせたときの笑顔ではないといいます。
子どもが何かに夢中になっている。
遊びに没頭している。
その瞬間、本人も意識しないまま自然にこぼれる笑顔。
高橋さんは、そんな「本物の笑顔」を見ることが一番嬉しいと話します。
ぱくぱく農園にも通じる「体験すること」の大切さ
今回、高橋さんの話を聞いて、ぱくぱく農園としても考えさせられることがたくさんありました。
土に触れる。
植物を育てる。
動物と接する。
自分で考える。
失敗する。
もう一度やってみる。
そして、夢中になる。
農業も自然教育も、知識だけを一方的に教えるものではなく、実際に体験するからこそ分かることがたくさんあります。
子どもたちに何を教えるかではなく、
子どもたちが自分から何かを発見できる環境を、どうつくるのか。
高校教師から始まり、海外での教育経験を経て、学童保育へ。
高橋さんが約20年にわたって続けてきた取り組みの根底には、一貫して「子ども自身が夢中になれる場所をつくる」という考えが流れているように感じました。
ぱくぱく農園としても、農業や自然を通して子どもたちにどんな「体験」を届けられるのか。
今回のお話は、そんなことを改めて考える貴重な機会になりました。
しぜん教育研究学園
代表:高橋弘明
所在地:群馬県館林市成島町1446-2
電話:0276-76-2015
平成12年に邑楽郡で開校し、平成13年5月に法人格を取得しています。


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